アスペルガー症候群

アスペルガーの疑い

2017年初夏、妻は不眠とPTSDの治療のため通っていたメンタルクリニックで、私と全く話ができないという問題を医師に相談しました。

妻によれば、

妻「そもそも日常の小さな用事を、夫と話し合って決められないんです。決められないまま夫は会社に行ってしまうので、仕方なく自分で判断して用事を済ませるのですが、私では判断したり解決したりできないことも多いので、それが積もり積もってくると負担になってダウンしてしまうみたいなんです。ダウンの原因は過労で、過労の原因は夫が日常生活の決め事をしてくれないからだと思うのです。夫は話があちこちに飛躍してしまうんです。」

医師「そうそう、自分が疲れる原因が分かったのは良いことだね。でも旦那さんにも何か心に問題があるのかもしれないね、そういう相談をする女性は結構多いよ。無理難題を押し付けられても、太極拳のようにサラッと流せるように考えてみたら?」

妻「それが、そうもいかないんです。放っておくと、大変なことをしでかしてしまうんです。私の言葉を鵜呑みにして、夜中に失踪してしまったり。イベントのスケジュール調整をしようとしても、どうしても初めに私が言った計画通りにしようとしたり、そのせいでキャンセルをして欲しいといっても、してくれず多額の支払いが発生したり。とにかくサラッと流したくても、流せないんです。」

すると医師は妻に質問したそうです。

医師「旦那さんはあなたに、何も言わなくても誕生日や記念日にプレゼントをしてくれましたか?」

妻「そういえば、一度もありません。忙しいのかと思っていました。」

医師によると、相談にくる女性の中に、夫との問題を抱えている人が結構いるらしく、例えば誕生日のプレゼントをくれない夫に対して、奥さんが「私は二千円のプレゼントでもいいから、貰えると嬉しいの」と言っても、その「嬉しい」という気持ちがまったく理解できない夫がいるそうなのです。

その話を聞いて、私は咄嗟に「自分はそんな無理解な夫ではない」と妻に反論しました。

しかし、後日そのことを考えてみると、私は妻に対して約束したプロポーズもろくにしていないし、誕生日や記念日にも、一度も妻を喜ばせるようなプレゼントやサプライズもしたことがないし、確かに自分にも同じようなところがある、と思い至りました。

医師「そのことについて、旦那さんに聞いてみたことがありますか?」

妻「あります。」

もちろん私だって、そういう妻が喜ぶことをしてあげたい、という気持ちはあります。でも、確かにできた例がないのです。

医師「旦那さんとのトラブルで一番困ることは何ですか?」

妻「夫が優先順位を決めて計画を立てて、実行することができないことです。私がこれまでずっと大切にしていたことを一つ一つ失っていって、とても苦しくて絶望してしまう事が多いです。夫が決断しないことで、私が判断して行動しなければならないのですが、結婚したら一人では決められないこともあるので、うまくいかないと自分が悪いんじゃないかと思って苦しくなってしまうんです。」

妻はそう言いますが、私自身は「優先順位をつけて計画を立てている」と思っています。でも、確かにできた例がないのです。もしかして私が思っている優先順位とは、目の前のことに集中してしまう、というだけのものかもしれないと気づき始めました。

いつも「今度こそ頑張る、次回こそきっと喜ばせてあげる」という根性論しか言っていなかったからです。

ようやく私も「気持ちはあったのに、たまたま実行できなかった」のではなく、何か根本的な問題があるようだと思わざるを得なくなりました。

会話は、まだ続きます。

妻「普通は誕生日なのにプレゼントや、それに代わるお祝いの言葉を用意できなければ、新婚であれば感情のトラブルが起きるという予想はできるのではないですか? 私にはどうして、夫が何も言わずにただ誕生日の日に普通に過ごしているのか理解できないし、傷つくんです。」

医師「男にはそういうところがあるからね、夫婦には色々とあるもんだよ」

妻「夫は、約束通りできなかったことで混乱して思考停止しているのだと思います。でも結果、私は深く傷ついて、お互いの信頼関係を維持することができなくなってしまい、とても辛いんです。」

妻は、人間に対する洞察力にとても優れているので、話し合いが成立しない私に対しても、根気強く対話を試み、言動を観察し、深く理解しているのだと思います。

医師「あなたの言っていることが事実だとすれば、旦那さんは一般にアスペルガーと呼ばれている大人の発達障害の可能性がありますね。男は多かれ少なかれ皆アスペルガーの傾向があるんだけど、旦那さんはそれがとても強く出ているような傾向があるね。人の気持ちは分からないけど、逆に『誕生日のプレゼントには、〇〇を買って』と言われればちゃんとやるから。そういう人だと割り切って接するといいよ。あとアスペルガーにも色々なタイプがあるから専門の病院で診断を受けることもできますよ。〇〇病院とか、知ってますか?」

医師は、私がいわゆるアスペルガー症候群ではないか、と指摘したそうです。

こうして、どうやら私は「アスペルガー症候群」の疑いが強いのだ、ということが分かったのです。

アスペルガーは知的障害を伴わない自閉症、つまり「発達障害」の一つです。

私は、当初このことを到底受け入れることができませんでした。妻にとっても、私がアスペルガーだということは「夫婦で分かり合うことは一生望めないのではないか」と、絶望的な気持ちになったのではないかと思います。

しかし今年になって、私の「話しができない」原因が、アスペルガーの症状と似ている、同じく大人の発達障害のADHDの可能性もあることを知ることになり、発達障害を理解して適応できれば希望があるのではないか、と前向きに考えた妻のお陰で、私たちは、新たな希望を見出しました。

それから私たちは、アスペルガーのことを調べ、アスペルガー本人や家族が書いたブログなどを読み、そして専門医に診断してもらう準備を始めたのでした。

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